大家から家賃値上げを求められたら?借地借家法で断った実体験

お金の勉強

はじめに

ある日突然、大家さんから一枚の手紙が届きました。

「水道料金が値上がりするため、来月から家賃を500円値上げしたい」

長年住み続けているアパートで、このような通知を受けたとき、あなたはどうしますか?「大家さんに言われたから仕方ない」と素直に応じてしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし実は、家賃の値上げには法的な根拠が必要であり、借主には値上げを拒否する権利があります。今回は私が実際に体験した家賃値上げ交渉の一部始終と、法的に断るための具体的な方法をお伝えします。同じような状況で悩んでいる方の参考になれば幸いです。


大家からの手紙の内容

届いた手紙にはこう書かれていました。

  • 水道局からの連絡により、令和8年度3月から水道料金が本格的に値上げになる
  • 今まで消費税をいただいていなかった
  • 水道料金の値上げと消費税分の負担で、毎月の水道代を500円値上げしてほしい
  • 現在の47,800円を48,300円にしてほしい
  • 振込先も変更してほしい

一見するともっともらしい理由に見えますが、実際に調べてみるといくつかの重大な事実誤認が含まれていました。


事実確認をしてみた

水道料金値上げの実態

浜松市の公式発表を確認したところ、水道料金の改定はすでに令和7年10月1日に実施済みでした。手紙に記載された「令和8年3月から」という内容は事実と異なっており、さらに減免期間の延長により本格値上げは令和8年7月からとなっていました。

消費税について

現行の消費税率は10%のままで、値上げの予定もありません。また、賃貸借契約書を確認すると、水道代は月額2,300円として明記されており、消費税分も含めた金額として契約時に合意済みでした。


法的に断れる理由:借地借家法第32条

家賃の値上げに関しては、借地借家法第32条という法律が借主を守っています。

この法律によると、家賃の増額が認められるためには以下の客観的な事情が必要です。

  • 土地・建物の価格の上昇
  • 固定資産税などの増加
  • 近隣の家賃相場との大きな乖離

**水道料金の値上げや消費税はこれらの要件に該当しません。**つまり、今回の大家さんの値上げ要求は法的根拠が非常に弱いものでした。

さらに、私の場合は2年以上にわたって47,800円を支払い続け、大家さんも異議なく受領してきた実績がありました。これは黙示の合意として法的に有効であると考えられます。


実際の対応手順

Step1:書面で断る意思を伝える

電話では「言った・言わない」のトラブルになりかねません。必ず書面で意思表示をすることが重要です。

送付方法としては以下の選択肢があります。

方法証拠力コスト
内容証明郵便+配達証明最強約1,300円
普通郵便+配達証明良好約460円
特定記録郵便十分約210円

私はコストを抑えるため特定記録郵便を選びました。郵便局の窓口で「特定記録でお願いします」と伝えるだけでOKです。

Step2:通知書の文面作成

文面には以下の内容を盛り込みました。

  • 値上げには同意できないこと
  • 大家さんの主張の事実誤認(水道料金の値上げ時期・消費税)
  • 借地借家法第32条に基づく法的根拠
  • 契約書に水道代が明記済みであること
  • 2年以上の支払い実績による黙示の合意
  • 従来通りの賃料で支払いを継続すること

Step3:従来の家賃を払い続ける

値上げに同意しないまま、従来の金額を払い続けることが重要です。新口座への振込案内がありましたが、金額は必ず従来のままにしました。新口座に値上げ後の金額を振り込んでしまうと、値上げに同意したとみなされるリスクがあります。


やりとりの経緯

大家さんの直接訪問

通知書を送った後、大家さんが直接アパートを訪ねてきました。値上げするよう直接言われましたが、「文面でお送りします」とだけお伝えして、その場での口頭合意は避けました。その場で口頭で合意しないことが非常に重要です。

大家さんからの反論

しばらくして、大家さんから特定記録郵便で返書が届きました。内容は以下の通りでした。

  • 浜松市上下水道部の公式資料を同封し、令和8年4月1日からの本格値上げを主張
  • 借地借家法第32条は建物の家賃のことで水道料とは違うと主張
  • 契約書には水道料2,300円とのみ書かれており消費税は明記されていないと主張

これに対して私は回答書という形で再度反論しました。

  • 水道料金値上げは家賃増額の法的根拠にならないこと
  • 水道料は賃料の一部として借地借家法第32条の適用対象であること
  • 契約時に2,300円として双方が合意済みであること

その後の経緯

回答書を送付後、先方からの連絡はなくなりました。毎月淡々と従来の47,800円を振り込み続けた結果、事実上、値上げ要求は収束しました。


今回の体験から学んだこと

知識があれば権利は守れる

法律の知識がなければ「大家さんに言われたから仕方ない」と500円の値上げに応じていたかもしれません。しかし借地借家法という強力な味方があることを知っていれば、正当に断ることができます。

書面でのやりとりが重要

口頭での交渉は証拠が残らず、後々「言った・言わない」のトラブルになります。すべてのやりとりを書面で残すことで、自分の立場を守ることができます。

毅然と・でも丁寧に

相手が個人の高齢の大家さんであっても、権利を主張することは決して失礼ではありません。丁寧な言葉遣いを保ちながら、毅然とした態度で対応することが大切です。


泣き寝入りしないための3つのポイント

  1. まず事実確認をする 大家さんの主張が本当に正しいのか、公式情報で確認する
  2. 法的根拠を調べる 借地借家法第32条を理解しておく
  3. 書面で意思表示をする 口頭ではなく特定記録郵便などで記録を残す

相談窓口

一人で抱え込まず、専門家に相談することも大切です。

  • 法テラス(0570-078374):無料で法律相談ができます
  • 各都道府県の宅建協会:賃貸トラブルの無料相談窓口があります
  • 市区町村の消費生活センター:身近な相談窓口として利用できます

まとめ

今回の体験を通じて、知識は最大の武器になると実感しました。

突然の家賃値上げ通知に動揺するのは当然のことです。しかし、借地借家法という法律が借主を守ってくれていること、値上げには正当な理由が必要なこと、書面で断る権利があることを知っていれば、冷静に対応できます。

同じような状況で悩んでいる方が、この記事を参考にして泣き寝入りせずに済むことを願っています。

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